ポルターガイストの家

4/10
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
   ◇  いびつな家族が暮らし始めた家は、朝になると必ずカラスが屋根の上にとまり、カーカーと鳴き騒ぐ。不穏な予兆と言っても良い現象だと私は思っていた。  スズメを丸のみしてしまいそうな大きいカラスが恐ろしくもあり、玄関を開けるたびに大きな蜘蛛が大きな巣を張っているのをほうきで一掃する手間もあって、新生活はストレスフルの連続だった。  学校まで片道徒歩一時間を超えているし、最寄りのスーパーもコンビニの片道十五分はくだらない。学校からいちばん遠い家の子として、早起きもしなければならなかったのはつらいものがあった。引っ越す前は学校まで五分、十分程度だったのだから。  母は元々保険の外交員をしていたので、職場復帰を果たした。当時、専業主婦のほうが圧倒的に多かった時代に子持ちの女がフルタイムの仕事をするのは珍しいケースだった。  父は実家の経営する建設業でサラリーマンをしていて、うちから勤めに出ていくようになっていた。実は両親の離婚は成立していなかったことを知るのはもっとずっと後のことになる。  肝心なことをなにも話さないまま、一年が経った頃。  六年生になった夏休みのことである。母が仕事の都合で二泊三日も家を空け、父は連絡なく帰らない日が続いていたある日。それは起きた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!