ポルターガイストの家

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 これは私が小学生五年生の夏休み(昭和59年頃)に起きた奇妙で恐ろしい体験談である。    ◇ 「今日からここが、我が家だから」  髪型を変え少し痩せて帰ってきた母が、私達三人兄弟を連れ出した場所は建売の一軒家。開発間もない荒れ地には道路だけ先に敷かれ、家はポツリポツリとしか建っていない、寂しい場所。 「お、おじゃまします」  用意されたスリッパは三人分しかなく、私は兄と妹と母にスリッパを譲って素足であがっていった。ガラス張りの引き戸を開け、左手のドアを手前に開けば開放的なリビングがあって、外の景色が良く見える。  振り向けば母は満足げな笑顔を携え、私達の反応を眺めていた。  一年ぶりに会う母。母は遠くの親戚の家で養生していると聞かされていたけれど、顔色も良いし健康そうに見えて、ホッとする。  持病の心臓が弱り、精神衰弱に陥った母は、ある日突然私達の前から姿を消した。この一年間、共に生活をして世話をしてくれていたのは母方の祖母だ。  今日、その祖母は一緒に来ていない。母と祖母は実の母娘なのに、結構仲が悪かったりする。  天気は晴れ。綿菓子を千切ったような白い雲が、青空の中を泳ぐように流れている。 「ここからまた頑張ろうと思う」  母の決意の言葉を聞いて、私もまた決意を新たに頷いた。母の左手薬指から指輪が消えているのを見て、私は心の中で胸を撫でおろした。
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