あの子は、

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あの子がいなくなった。 小さな田舎の村は新しい恐ろしい事件に、ざわめいた。 探さねば。 そう口にしたのは誰であったろうか。 あの子を探そうとは愚かなことだと私は思った。 あの子を探しに彼らは山へ入った。神聖で、彼らにはふさわしくない場所。あの子は幸せなのに。少なくとも彼らが居ない今の方が。 私は怒りを覚えた。親が子を想って持つ怒りと同じようなもの。激しく情熱的で揺るがないもの。死を心底願うもの。 彼らは後、死んだと聞いた。 あの子は今。無邪気に笑っている。忘れ去られたことなど知りもしない。 「かあさま、あそびましょ」 「もう少し待ちなさい、あとすこしで全て終わるわ」 私は全てを終わらせる。 全てを知らないあの子のために。 愛が全てを知っている。 持ち主より余程。 ねぇ、私は間違っているかしら。 あの子がいなくなった。 みんながいなくなった。 あの村は、存在しない。
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