本当は

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本当は

あの子は、とある村で大量虐殺がある前に神隠しにあった子供だ。 何枚かの一面の記事が黄ばんで押し込められていた本棚は沈黙している。 でも私は気がついてしまった。 知ってしまった。 本棚についている茶色のシミは曖昧な笑みのかあさまが教えてくれた昔派手にこぼしてしまったコーヒーなんかじゃない。 血だ。 誰かの血だ。 村人の血だ。 ある記事には虐殺の後からはいくつかの家具が消えていたと書いてあった。 もしかして。もしかしなくても。 この家にある家具は。 私の好きな家具は。 あの村のもので。 あの村の人のものだった。 私は震える自分の体をそっと抱いた。 さあどうしようか。 かあさまが帰る前に私はいつもに戻らなくちゃ。 かあさまが大好きで明るくて純粋で無邪気で。 何も知らない子に。 何も知らない私に。
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