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「とにかく、アイツらを何とかしなきゃ。アタシたち、キュートジャスティスのメンツ丸潰れよ」  メンツと聞いた途端にケコがむっくり起き上がり、真剣な顔をした。 「おおっ、ヤル気になったかい?」 「……おまきさん」 「あいよ!」 「空腹警報発令、これよりワタクシは全力でご飯に向かいます、チュパーン!」 「え、ええっ?」  ケコはやたらカッコ良く敬礼を決めると、つむじ風のように身を翻し、あっという間に姿を消した。きっとピエモンテ用の置き餌をこっそり食べにいくに違いない。 「ちょ待て、待っ、おおーいいいいぃ!」  つい出た大声に、飛んでいたカラスがぎょっとする。それを睨み付けてから、おまきは深いため息を吐いた。 「しゃあない、アタシがでばるしかないか」  アテにならない相棒に頼ってもダメだ。  おまきは豊満な巨体を揺らして立ち上がり、団子尻尾を機嫌悪そうに振りながら情報収集へ向かった。  猫にはそれぞれのテリトリーがあり、ピエモンテのそれは自宅から半径二キロメートル圏内である。目撃情報によると、ピエモンテはテリトリー内の空き地に置かれた資材の上で昼寝をしていたところ、銀色全身タイツ黒目二人組に捕獲されたことが判った。  銀色全身タイツ黒目、ビンゴである。  更に、三日前には二丁目のボブが、昨日には鈴木の婆さんとこのデップリーがいなくなった。  彼らに共通するのは、デブスで温和で鈍くて、焼いたサンマの匂いが大好きなところだ。
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