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城に戻り、少し休もうと部屋に行く途中
ステラはキャロルに呼び止められた。
「ステラ・・・」
「あ?キャロルどうしたの?」
キャロルはいつもの穏やかな微笑を絶やさずにステラに近づき、何やら袋を差し出した。
「何?これ・・・」
中を覗くと、青い小瓶がたくさん入っている。
「これは・・・。」
そう、魔性との戦いの時渡された妖精の滋養薬・・・。
「あなたが持ってて。あと、闘いの日々で少しでも倦怠感が現れたら絶対飲んで。」
「え?これ皆の分でしょう?」
しかしキャロルは、穏やかながらに譲らない口調で言った。
「お願い・・・。約束して。」
キャロルの瞳を見ると必死に懇願している。
ステラはその想いに圧倒されて、思わず頷いた。そしてステラが部屋に戻り、少しほっとしたようにキャロルも部屋に
帰ろうと振り向いたその先に、リーディが居た。
「リーディ・・・。」
「キャロル、どういうことだ?」
「・・・・・・。」
「・・・ステラのマレフィックの力が命に係わるってことだろ?」
「!」
リーディの部屋でキャロルとじっくり話して
彼は再度知った。ステラがマレフィック・ミックスであることにより短命であることを・・・。
彼は信じたくなかったが、真実だと知ったのだ。妖精の長老が言うのなら間違いではないだろう・・・。
「リーディ・・・私・・・」
キャロルの表情を見ればわかる。リーディはすぐに察した。
「ああ・・・ステラには言うなって。無論そのつもりだ。」
言ったところで信じないか・・・信じても思い悩むだけで負担にしかならない。言う必要ない情報だと彼は思った。
それよりも。
「この滋養薬が、魔力の放出により命を縮めるのを抑える働きがあるので
身体に倦怠感があった場合速やかに飲ませること。それをステラに徹底させること・・・ね」
「わかった。」
二人は他の仲間にも多言しないことを誓った。
*
ステラ達は次の日も話し合いをして
とりあえず、ゲランの街へ移動することに決定した。
振出しに戻った今、久しぶりに光ったペンダントの光を信じるしかない・・・。
そう思ったからである。
まず、北の大陸はこれから冬だ。冬支度をするにも年中温暖なスフィーニではできないのでとりあえずゲランに一時的に滞在して準備をする。
旅立つ前にまず、洞窟に乗り捨ててきた船を回収しにステラとメイとコウ・・・そしてゾリアで城の船に乗って向かうことになった。
メイとゾリアの掛け合いをヤキモキしながら見るコウをステラはふふふと笑って見守り、潮風を浴びる。
「あっはっは、ゾリアって何気に性格は三枚目よねー」
「ふっ・・・この色男に向かってそう言うこというかなぁ?お嬢ちゃん?」
「なーにお嬢ちゃんよ。私の方が年上なんだからねー!」
「ええ?」
―ゾリアさん、リーディと同い年なんだよね・・・。
メイは童顔な方だから、化粧をしてないとほんとあどけない。くすくす笑いながら遠方を見ると島が見える。
しかしその島が彼女の母の国、リストンパークだとは知らないまま船は通り過ぎてゆく・・・。
すると、ぽんと肩を叩かれる。
振り向けばゾリアが立っていた。
「ゾリアさん・・・メイは?」
「ああー。弟君が気味の悪いほどの微笑で
見ているからさ。」
「あの二人仲良いモノね。」
・・・ほんとこっちがお嬢さんなんだよな・・・。見た目に反して男女の機微に疎いんだ。どう見てもあの弟のほう、メイの事好きだろう・・・。
ゾリアは長い指で頭を軽く掻くと、気を取り直してステラの横に立つ。
「・・・あまり元気無さそうだな?麗しのステラ殿」
「ゾリアさん、それ止めてください・・・。」
「お、ごめん。つい女性を見ると癖で。」
ステラはそんなゾリアにホッとしたのか少し笑うと再び海を眺めた。
「・・・王子の事か?」
「あ・・・ええ・・・。」
そして、本当にわかりやすいなぁとゾリアは思う。
「もしかして、さらに突っ込むとレオノラのこととか?」
「!」
図星だ。
「確かにあの二人はいろいろあったけども・・・もう終わったことだし
それに、過去は誰でもあるものだ・・・。当時あの二人は相当参っていた。」
「・・・・・・・。」
「今は君を見ている。それは誰からでもわかるよ。」
「ええ・・・。でも不安なんです。」
海を眺めたままステラは言った。
「レオノラのこととか、自分の境遇のこととか一度取り払ってみたらどうだい?
どうやらステラ、直情的なようで恋に関しては臆病なようだ・・・。」
「・・・・・・。」
そうなんだ。
私もアイツも、使命とかそう言う物が先に来てしまう。それにレオノラさんと、今は何もないにしても・・・未だにぐずぐず引っかかっている
自分に嫌悪感もある。
要は私の初めての恋心における、汚い感情を目の当たりにして戸惑っているのだ。
それに・・・
「王子を頼むよ。」
ゾリアはステラの肩をポンポンと2回叩き、最後に言った。
「自分自身に素直になることは、大切な事さ。」
そうして再び甲板を歩いてキャビンに向かって行った。
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