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9/1_教室_一時間目
これを一目惚れと言わずして何を一目惚れと言おうか。初恋ではなかったけれど、それまでの恋心を抱いた時とは全く別の、なんだか泣き出したくなるような気持ちが胸に溢れた。
白いTシャツとジーンズの短パンから伸びた細く長く白い手足と首。首の上の顔も白く、どことなく異国の人っぽい顔立ちをしていた。ダークブラウンの長くて少し波打つ髪が、扇風機の風に揺れていた。
先生が黒板に大きく、その子の名前を書いて「自己紹介をお願いします」と言うと、女の子はス―と音を立てて深呼吸し、スッと右手を横に上げ、窓を指差した。
「あのテントと共にやって来ました、木本オリガです~!よろしくお願いします~!」
どっとクラスに笑いが起こった。
「なんか芸人みたいー!」
雅志がからかう様な調子で言った。彼女のイントネーションは僕の父と似ていた。
「生まれが大阪なんで、こんな喋りです~!三か月後にあのテントと共に去ってしまいますが、それまで仲良うして下さい~」
彼女が話すたびにクラスに笑いが起きたが、僕は笑えなかった。聞き捨てならない事を今さり気なく言った。三か月後に去る…泣きそうなあの気持ちが大きく膨らんで、手で触れられない場所がズキズキと痛くなった。
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