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寝不足はシャワーを浴びて冷えたドリンク剤を一発決めればどうにかなるだろうと思いながら帰宅した翠は、パソコンを起動してメールをチェックし、一気に落ち込んだ。
先日コンテストに出した小説作品が、落選したとの連絡がきていたのだ。
中間選考に通ったときは、今度こそと期待していただけに、入賞もしなかった結果に気力を一気に削がれてしまった。
シャワーどころではなくなり、とりあえず携帯を出してチャット形式のSNSアプリから小田に、落選の報告をした。
《大丈夫? 落ち込んでいる?》
翠の落選報告にすぐに既読の文字がついて、小田から翠を心配するメッセージがすぐに返ってくる。
《かなり。本当はネタのことを課長に聞いてもらおうと思っていたのに、帰宅してメールチェックしたらいきなりこれですもん》
お互いのアカウントは、ふたりでカフェに行って閉店時間まで共通の好きなシリーズについて語り合い、秘密を暴露し合った夜に交換している。
《残念でしたね、青木(あおき)美琴(みこと)先生》
《やめてください~、先生なんてつけないでください、こんなポンコツ駄文量産野郎に》
「青木美琴」は、翠が作品を公募に出す時に使っているペンネームだった。
小説投稿サイトにも同じ名で登録して、不定期で短編を公開したり、中編くらいの長さのものを連載したりしている。落選を知らされたばかりの今は、その名前で呼ばれたくなかった。
《私なんてもう小説を書かない方がいいんでしょうか》
《そんな弱気にならないで。『カノッサの復権全三巻』を世に出した瀬倉(せくら)剣(けん)先生は賞を取って書籍化されるまで十年かかったってインタビューで言っていたじゃないですか。書籍化された途端、他の出版社からも執筆依頼がくるようになったとも》
《瀬倉剣先生は天才じゃないですかー》
《その天才が十年かかったんですよ》
《やばい! 私なんかじゃおばあちゃんになってからですね!》
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