プロローグ

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 さすが年の功。小田の言葉に上手く気分転換させてもらい、《明日にでもネタの相談に乗ってください。今日は励ましてくれてありがとうございました》と返すと、小田の方からも《楽しみにしています、おやすみなさい》と返ってきた。 (これで付き合っていないのも面白いというか、傍からみたら私も課長も変わり者にしか見えないよね)  携帯を見ながら翠はくすっと笑った。そして、机の上のパソコンの横に、権と額を打ち付ける。  趣味だから書くけど、好きだから書き続けるけど、落選の通知っていつもらってもきついなあ――  今夜は執筆するのをやめようと決めて、翠は立ち上がってキッチンに行き、冷蔵庫からよく冷えたレモン味の缶酎ハイを取り出した。  今夜は独り残念会、明日の仕事に響かない程度にこの一缶だけ。酎ハイはするりと翠の喉を通っていき、レモンの酸味と苦みを残していった。 .
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