第一章   作品名『学園ヒーローの恋人は本の虫?』

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 高校時代の翠は友人もそれなりにいたし、休み時間に図書室に行くときも教室に戻ってきたときも、声を掛け合っていたし、時には本を閉じて友人たちと馬鹿話に興じることもあった。  対して、この主人公は何だか友達がいなさそうな感じになってきている。そうなると、学園のヒーローとの仲が深まるにつれて孤立しそうなので、主人公を庇ってくれる友人が欲しくなる。  そこで、主人公にひとりだけ友人がいることにした。  小学校からずっと一緒の幼馴染みで、いつも主人公の相談相手になってくれたり、守ってくれたりする友人。活発で明るくて、主人公が内心羨ましがるくらいの子。  その子のキャラクターを考えたところで、そうか、親友も彼を好きになって、そこで友情か恋愛かどっちをとるかで悩む展開になってもいいなと翠は思い始めた。  主人公は、親友のために身を引こうとするけれど、彼氏は主人公の方がいいと言って追いかけてくる、親友もふたりの仲を応援していると励ます、うんうん、それでいこう。  あまりに使い回されている設定だけれども、翠は逆に楽しくなってきた。そこにどこまで新鮮な要素を入れられるかが、腕の見せどころだ。 「ようし、挑戦してやろうじゃないの」  恋愛ものが苦手なのに、そう考えてしまった時点で、翠はまずいと思えばよかったのだ。だが、そのときは主人公と親友、ヒーローの三角関係に夢中になるあまり、書けると思ってしまった。  それから主人公とヒーローの仲に嫉妬して意地悪をする女の子たちを考え、担任の先生には、重要なポジションを与える必要はない気がするなどと、登場人物の設定をひとりずつ考えていった。  最後に残されたのは、学園のヒーローと呼ばれる、主人公とハッピーエンドを迎える男の子だった。本当は、主人公を考えた段階で、合わせて決めてしまえばよかったのだが、学園のヒーローと名付けただけで何となくキャラクター設定が出来上がった気になってしまい、後回しになっていた。
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