1541人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
学園のヒーローというからには、生徒会会長というのがよくあるパターンかもしれない。もしくはスポーツで大活躍。女の子たちが練習を見に殺到するくらいの人気と実力があるとか。
どちらにしようかと考え、翠は学園のヒーローをサッカー選手にした。
ヒーローとヒロインは対極にいる男女にしようと思ったので、主人公が三つ編み眼鏡本好きのインドアな子だったら、彼氏はスポーツ万能、周囲の期待も大きい爽やかハンサムでちやほやされて、ちょっと俺様が入っているようなアウトドアな子がちょうどいいだろう。
よし、できた! これでいこう! そう考えてまずは主人公の日常から書き始めたはいいが、早々に行き詰ってしまった。
そこで、小田にメッセージを送って、弱音を吐いたのである。
《よくある王道設定にするなら、どこかでトリッキーなことをしないと》
《そうなんですよね。でも私、書いている間に思いつくことも多くて、きっちりプロットを練り上げてから書き出すタイプじゃないんです》
名の売れた作家でもないくせに何を偉そうにとも思うが、翠は今までそうやって書いてきたので、今回もそれでいけるはずだった。
しかし、いけなかった。
ヒーローとヒロインの出会いも、その後のふたりの関係の進展も、何もかもがちぐはぐに思えて前に進めなくなった。
《書いているうちに、登場人物が動き出す。そういうことってあると思いませんか、課長》
《僕は自分で書いたことがないから、その感覚はわかりません》
律儀に返してくれる小田は、読んで妄想することに特化した自称二次元オタクで、自分で文章にしようとは思わないらしかった。
最初のコメントを投稿しよう!