Love at first sight

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 斜め上に向けられたシャープな顎。細い首から肩に流れるラインは優雅で、思わず何度も目を這わせてしまうほど美しいのに、不機嫌そうに眇められた瞳が、まるで触れるものなら触ってみろと挑発しているようだ。  煽られるとその気になるのが男の性で、美しくも挑発的な顔を見て、ねじ伏せてみたい欲望にかられ、拓真の視線は人形の身体全体をすみずみまで検分をし始めた。  顔の良い人間はたくさんいるが、頭の大きさや身体のバランスが取れたモデル並みの人間は、そんなにはいない。  この人形はその常識さへも覆し、背はそんなに高くはないながらも、手足が長くてプロポーションが良かった。  ネクタイを緩め、白いシャツのボタンを2,3個外した襟元からは、陶器特融の艶のある白い肌が覗いている。本物はどうなのだろうと、釉薬(ゆうやく)による光沢を温かみのある生身の人間の肌に置き換えて想像してしまった拓真は、途中で気が付き、バカなと頭を振って想像を追い払った。  その瞬間、夏海の言葉が蘇った。 『不思議なことに自分の顔そっくりになるのよ。顔の造作が整った女性が作るお人形は、本当にきれいなの。うっとりするぐらい』 「美しいポーセレン人形を作る作者は、人形に似て美しいか……」  
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