最悪の出会い

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「あっ、そうか。それは考えなかった。それに、【魅蕾】シリーズは私だけじゃなくて、北斗の作品も入っていることを、知られたくないんでしょ?」  北斗は七星の質問に頷きながら、本当は売る場面を研吾に見られたくないという思いを隠していた。  その人形を売るのかと聞いた時の研吾は、撤回を迫る鋭い眼差しをしていた。もし、あの眼差しで見られたら、お客は怯えて帰ってしまうかもしれない。  そんなシーンを七星に見せて、余計な勘繰りをされたくなかった。 「なぁ、七星。あのさ、研吾さんって、あっちはどうなの?」 「なに、あっちって?」 「う~んと……。その……そうだ、赤ちゃんは、まだ作らないのか?」 「はぁ?何急に?あっちって、そっちのこと?」  急に赤くなった妹を見ないように、そうとだけ頷いて、北斗は心の中で、何で七星と研吾の夜のことなんて聞かなくっちゃいけないんだと叫びたくなった。  でも、七星の返事次第で、自分の憶測が間違っていると確認できて、安心できるかもしれない。
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