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経営者は二人もいらない。北斗は家業を七星と研吾に任せ、自分はMisawa Co.,Ltd.のセラミック製品の活路を見出すために、大手住宅会社に就職を決めて、はや4年目になる。
父の武史の指導を受けながら、七星は婿に入った研吾と一緒に会社の運営を勉強していて、今のところうまくやっているようだ。
そろそろ自分もこの家を出て、自活しようかと思いながら、北斗はレンガで覆われたチューダー式の建物を見上げた。
曾祖父母の時代から続くMisawa Co.,Ltdの工場には、陶磁器を焼くための窯に設置された大きなレンガの煙突が、今も残っている。
陶磁器メーカーを象徴する煙突を、曾祖父は誇りに思い、チューダー式の家の屋根にも立てたので、外観的にも本格的な価値ある建物として、雑誌に紹介されたこともあった。北斗にとっても、今は亡き母の思い出が一杯詰まった大切な家だ。
外灯に照らされたレンガ敷きのアプローチを歩いて玄関のドアを開けると、七星がちょうど廊下を歩いて玄関にやってくるところだった。
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