Half-boiled

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Half-boiled

 北斗はどうやって話をもっていったらいいのか焦っていた。  運転をしている拓真は、ひじょ~~~に機嫌が悪そうだ。  それはそうだろう。提示した金額の倍以上を払ってくれるほど、北斗の人形を気に入ってくれたのに、研吾の話ではエレベーターで、ラグビーよろしくタックルをかまし、ボール代わりの人形の箱を奪って逃げたということだった。  店内を走り抜けていく男と、赤いリボンの箱に気が付き、飲んでいたコーヒーを噴き出すところだった北斗は、すぐに嚥下して席を立ち、猛ダッシュで後を追った。  七星もその男を見ていたので、北斗は伝票頼むとだけ言い放ち、いきなり始まった追走劇にざわつく店内を後にして、研吾が乗り込んだエレベーターのドアが閉まる瞬間に両手で押さえてこじあけ、中に滑り込んだ。 「お前何やってんだ!」  いくら変装をしていても、いつも会っている研吾の背格好を北斗が見誤るはずがない。動揺と怒りで、敬称無しのお前呼ばわりをして怒鳴りつけるが、研吾は口を引き結んで何も言わず、人形の箱をしっかりと抱いている。
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