38人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「たぶんもうこれでタケシも忘れるだろう。おまえの義母さんも一役買ってくれたことだし」
父親がひと息をついて言うのに、
「……最近、ちょっと認知症の気もあるみたいだからね。ちょうどよかったわよ」
母親は苦笑いを浮かべた。
「まぁな……もう誰も、あの子のことなんて覚えてないし。さて、話もついたからそろそろ寝るか」
言いながら、父親が枕元の電気を消す。
「そうよ、誰も覚えてないんだから」
真っ暗な中で、母親はひとり呟いて、
「あの子なんて、最初からいなかったのよ」
と、口にした……。
終
最初のコメントを投稿しよう!