3 千夏side

1/4
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/16

3 千夏side

「かっこええなあ、この人。なあ、紹介してくれへん?」  こんな事、言うつもりなんかなかった。そやけど言うてもうたんは、少しでも気にしてくれるんやないやろか、嫉妬してくれたらて思たからや。けど結果は裏目に出た。全くあたしに興味はなさそうや。  拓巳の目は、あたしを掠めることすらなかった。ほんの少しだけ開けた唇から「煌介彼女居るし」と掠れ気味の声が漏れただけやった。拓巳は何処を、誰を見てるんやろう……。あの時は確かにあたしの事を見てくれとったんに。  なーんや、アホらしうなってきた。駆け引きやなんて所詮あたしには似合わへんな。 「もう行くわ」  拓巳の部屋を後にして、約束の喫茶店へと足を向けた。その道中で、あたしはあの日の事を振り返った。  誰もがあたしの事なんかまるで気に掛けてへんかったんに、拓巳だけがあたしを見つけてくれたあの夏の事を……──。
/16

最初のコメントを投稿しよう!