2 拓巳side

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2 拓巳side

「お邪魔しますー」  ハキハキとした、明るい声が家の中に響き渡る。その声を聞くだけで、なんやそわそわする。暖かい気持ちになるんや。 「拓巳ー、辞書貸してー。あれ? 居らへんの?」 「おい、勝手に入るなや」  ノックもせんとズカズカと人の部屋に入った千夏に、後ろから声を投げた。あー、何でこーなるんやろ。感じ悪いやないか。 「おば様がええ、言うたもん」  俺には聞かんでええんか!  それだけ言うて、千夏は勝手に机の上を探り始めた。 「勝手に触んな」  近付いた瞬間、フワリとええ匂いがした。 「どっか……出掛けるんか?」 「別に? 友達と課題やるだけやで? 何で?」  不思議そうにこっちを向く千夏。その割にはえらいバッチリ化粧しとるやないか。その口紅も誰に見せるんや。男が一緒とちゃうんやろな? 「香水……付けとるんと違うか?」 「付けてへんよ。シャンプーは変えたけど。え、匂う?」  困ったように眉を顰める千夏。それさえも愛らしうて、なんや直視できんくて……。 「参ったなあ……。お姉ちゃん来てるんに」 「は?」  何で心春(みはる)さんの名前が出てくんねん。 「赤ちゃん、居んねん。お腹に。妊婦さんにはキッツイ匂いあかんやろ?」 「そうか、別にそんな気にならんで。それよりお前辞書買えや」
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