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待ち合わせの場所であるいつもの公園へと、彼は約束の時間よりも、やや遅れてやって来た。
見た目通り、真面目な彼にしては、めずらしいことだった。
しかし彼は、遅くなったことを謝るのもそこそこに、ここに来るまでに乗った電車での出来事をボクに語り始めた。
「――小学校二、三年生くらいの男の子かな?鼻血を押さえながら電車に乗り込んできたんだ。ケガをしているように見えなかったから、のぼせちゃったみたいだ。今日も本当に、暑かったし」
「・・・・・・」
確かに彼の言う通りだったので、ボクは黙っていた。
殺人的な太陽が沈み、ようやく暗くなったというのに、全然涼しくならない。
直射日光がなくなっただけマシ。というレベルだった。
彼はなおも、話し続ける。
「それで、ティッシュで鼻を押さえていたんだけど、お母さんだろうなぁ?ティッシュ、それで最後なんだから大事に使いなさい!って、テンパっちゃってて、かわいそうだったなぁ――」
彼がかわいそうだと思ったのは、鼻血を出した子供なのか、それとも母親なのか、ボクには分からなかった。
だから、ただただ黙って聞いていた。
――でも多分、子供の方なのだろう。
彼は目に見えて、済まなそうな顔をした。
「だから、全部あげちゃったんだよね。そのお母さんに。予備に持っていたポケットティッシュ、三個とも」
「・・・・・・」
言い終えると一転、彼はニッコリと笑った。
その母親にティッシュを手渡した時も、そんな顔をしていたんだろうと、ボクは想像する。
嫌う人などいないような、人好きがするそのものの顔――。
目に浮かぶようだった。
「ゴメンね」
「?」
今度は何で謝られたか、首をかしげるボクへと彼は続ける。
その、人好きがする笑顔のままで。
「だから、今日は口でするね。でも、全部飲んで舐めて、キレイにしてあげるから。ティッシュないけど、それで許してね?」
「・・・・・・」
ボクはけして、屋外でするのが好きなワケではない。
ただ、彼のこの笑顔を見るとけしてイヤだ!とは言えなくなる――。
よく響く、明るい声で言われたことは全て、その通りにしなければいけないような気持ちになってくる――。
実際に、ボクは座っていたベンチから、まるで立ち上がることが出来なくなってしまった。
そんなボクの、ズボンのファスナーに彼の指先が掛かり、下ろされていく。
彼の笑顔がボクの視界から消えるのと、下半身に快感が走るのとは、ほぼ、同時だった――。
終
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