0人が本棚に入れています
本棚に追加
怪物
蛇は子ウサギを食べました。それは久しぶりの食事でした。蛇はお腹がいっぱいで幸せでした、あのまま何も食べなければ、あと何日命がもつか分かりませんでした。
満腹の蛇はゆったりと地面を這っていました。この辺りには蛇の天敵は少なく、特に警戒する必要もありません。
と、その時蛇の体が持ち上げられ宙を舞いました。蛇は自分が天と地と、どちらを向いているのかも分かりませんでした。そのうち、何かに口を無理矢理広げられました。蛇の牙は鋭く尖っていて敵に噛みついて攻撃することができますが、大きく広げられては噛むことができません。つぎに蛇は仰向けにされました。蛇は次に自分がどうされてしまうのか分かりませんでした。
蛇は神様にお願いしました。
「あぁ、神様。どうか助けてください」
神様が応える代わりに、人間の声がしました。
「皆さん見てください。ここにはこんな怪物が潜んでいるのです。この牙を見てください。噛まれたら人間なんてすぐにこの蛇の餌食となってしまいます。そしてこの腹。ウサギか何か小動物を飲み込んだのでしょう。どっぷりと膨らんでいます。あぁ、恐ろしい怪物」
蛇は自分が怪物なのか、蛇を捉えている人間が怪物なのか分かりませんでした。
そのうち、人間は蛇をもとあった場所へ放り投げて言いました。
「未知の怪物はまだまだ潜んでいるのです」
蛇はその場から素早く逃げました。人間は追ってくる様子はありません。ただ、またいつ襲って来られるかと思うと恐ろしくて恐ろしくて仕方ありませんでした。
次の日、蛇は昨日の子ウサギの消化も終わり身軽でした。また、餌を探してゆったり這っていました。そこに、人間の匂いがしてきました。蛇は恐ろしくて恐ろしくて堪らなくなりました。だから、人間が現れた時、蛇はとっさに噛みつきました。人間は踞り、痛みにもだえています。蛇はまた捉えられるかもしれない恐怖で全身が震えました。蛇は夢中で牙を向きました。その時、銃声が聞こえました。蛇はその場にバタンと倒れると動かなくなりました。
また、人間の声がしました。
「怪物を退治したぞー」
蛇は薄れていく意識の中神様にお願いしました。
「神様どうかお願いです。もしも、生まれ変われるものならば、今度は怪物のいない世界に生まれ変わらせてください」
最初のコメントを投稿しよう!