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兵士
兵士が訓練をしています。戦争はまだ始まったばかりです。兵士は順番に戦場へ出ていきます。
出陣を目前に、一人の兵士が倒れ込みました。戦場で戦う恐怖に耐えきれなくなったからです。
兵士たちの隊長が駆け寄ります。
「立て。立って国のために戦うのだ。お前は選ばれた兵士だ。立て」
兵士は応えます。
「僕は兵士になんてなりたくなかった。花や木を育てて穏やかに過ごしたかったのに。戦場なんかに行きたくない」
隊長は、兵士の襟元をつかんで立ち上がらせ大声で言いました。
「バカ野郎。お前は戦うためにここにいるのだ。銃を持て。敵を殺せ」
兵士は泣きながら懇願しました。
「どうかお願いです。僕を許してください。僕は臆病者です。僕を国に返してください」
隊長は激怒し、何度も何度も殴った。
「バカ野郎。バカ野郎。お前のような奴はこうしてやる。国に帰るなんて絶対にゆるさん」
隊長は、指揮官に厳しく言いつけられていました。
「一人の残らずしっかりと戦場に送り出し、立派に戦うように統率を取れ。それがお前の役目なのだ」
隊長は何度も何度も兵士を殴りました。兵士の口からは赤い血が吹き出しました。それでも隊長は兵士を殴り続けました。そしてついに兵士は動かなくなりました。
遠退く意識の中、兵士は故郷の夢を見ました。
「私は故郷の山に戻れるのだな」
兵士は血溜りの中で息絶えました。
隊長はその他の兵士を連れて戦場へ向かいました。戦場に着くやいなや、隊長も含め隊員は一人残らず爆撃に吹き飛ばされました。
遠退く意識の中隊長は思いました。
「何をどうすれば、何から逃げられたのだろうか」
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