0人が本棚に入れています
本棚に追加
「こんにちは。よかったら、参拝していかないかい?」
私と青年が鳥居の前で立ち止まっていると、袴姿の優しそうな男性が鳥居の向こうの境内にほうきを持って立っていた。男性は、この稲代神社の神主である。
「あ、こんにちは。…じゃあ、そうしようかな。あ…、あと、この神社の写真を撮ってもいいですか?」
「もちろんいいよ」
青年が境内へと歩き始めたのに気づいて、私も彼の後を追った。
「ハクヤも一緒だったのか。彼女は不思議な猫なんだよ。この神社に住み着いているだけの野良猫なのに、いつも飼い猫のようにきれいな姿をしてる」
「えっ?この猫、野良猫なんですか?」
「そう。そうは見えないよね。名前は、近所に住む女の子がつけたんだよ」
「へぇ…」
二人は私を見ながら私の話をしている。
そう。私はここで生まれて、今まで生きてきた。家族の記憶は曖昧だけれど、他の猫友達もいるし、村の人たちはみんな優しい。
最初のコメントを投稿しよう!