初恋の人

10/11
1945人が本棚に入れています
本棚に追加
/203ページ
「先生だったじゃん」 「実習だろ」 あたしと学くんの出会いはあたしが高校2年生のとき。 大学四年生の学くんが教育実習をしにうちの高校にやってきた。 イケメンで優しくて、それでいて冗談もたくさん言って。 わかりやすく授業をしてくれる学くんは生徒達に大人気だった。 みんなが学くんに憧れてた。 憧れの先輩的な存在だったと思う。 あたしもそのひとりだった。 あの時までは。 「まさか、御曹司だったなんて」 「あの時は俺も御曹司のつもりなかった」 「え?本当に先生を目指してたの?」 もしもそうだとしたら。 夢をかなえらなかったことになる。 「まさか」 自嘲するように笑う。 これには、きっと本心じゃないんだろうなってそう思った。 なんとなくわかる。 学くんが嘘をついてるとき。 学くんが何かを我慢してるとき。 一緒に過ごした期間は仲良くなってからのたった一週間くらい。 それでも、今よりもいろんな表情を見せてくれてた。 「じゃあなんでうちの高校に?母校でもないのに」 教育実習は、だいたい母校にくるものだ。 でも、学くんはうちの学校の卒業生ではなかった。
/203ページ

最初のコメントを投稿しよう!