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「先生だったじゃん」
「実習だろ」
あたしと学くんの出会いはあたしが高校2年生のとき。
大学四年生の学くんが教育実習をしにうちの高校にやってきた。
イケメンで優しくて、それでいて冗談もたくさん言って。
わかりやすく授業をしてくれる学くんは生徒達に大人気だった。
みんなが学くんに憧れてた。
憧れの先輩的な存在だったと思う。
あたしもそのひとりだった。
あの時までは。
「まさか、御曹司だったなんて」
「あの時は俺も御曹司のつもりなかった」
「え?本当に先生を目指してたの?」
もしもそうだとしたら。
夢をかなえらなかったことになる。
「まさか」
自嘲するように笑う。
これには、きっと本心じゃないんだろうなってそう思った。
なんとなくわかる。
学くんが嘘をついてるとき。
学くんが何かを我慢してるとき。
一緒に過ごした期間は仲良くなってからのたった一週間くらい。
それでも、今よりもいろんな表情を見せてくれてた。
「じゃあなんでうちの高校に?母校でもないのに」
教育実習は、だいたい母校にくるものだ。
でも、学くんはうちの学校の卒業生ではなかった。
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