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「んー、復讐かな?」
「復讐……?」
「もういいだろこの話は」
聞き返したあたしにふいと顔を背ける。
「そんな……気になるよ」
「お前には関係ない話だから。忘れろ」
近づいたと思えば離れてしまう距離。
あの頃もそうだった。
同じ気持ちだと思ったのに、すぐに消えてしまった。
「でも、本当は教師になりたかったのに今こうしてることに不満があるんじゃない……んっ」
2度目のくちづけは乱暴だった。
「うるせーよ。それ以上言ったら襲うからな」
「……っ」
本当にこの話が嫌なのだろう。
あたしにはわからないお金持ちなりの苦悩があったりするのだろうか。
いつか、あたしが彼にとってなんでも話せる存在になれたらいいのに。
あの頃のあたしにとって、ほんの少しの期間だけ一緒にいたこの人がそういう存在だったように。
あたしも、彼にとってのそういう存在になれたらあたしが一緒にいる価値を見いだせると思うの。
学くんにとって、この結婚が意味のあるものになって欲しいと思うから。
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