好きな気持ちは溢れそう

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「そうなんだ……」 学くんは懐かしそうに目を細めて話す。 お母さんのことが大好きだったんだろうなってことが見てるだけで伝わってくる。 でも、知らなかった。 あのころ、そんなことがあったなんて。 「もしかして、教育実習を最後までできなかったのって……」 「ん。母さんが危篤になったから」 それなのに、あたしは。 最後までいてくれなくて、約束を守ってもらえなくて。 そんな理由があったなんて思いをせず、憤りを感じたメッセージを学くんくんに送っちゃったね。 「ごめん……あたし何も知らなくて」 「知るわけねーじゃん。でも、その後も何も言わなかった俺がそこは悪いから」 気にすんな。とあたしの頭をぽんぽんっと撫でてくれる。 その手つきが暖かくて。 そして、そう話す学くんがどこか寂しそうで。 「お前、なんで泣くんだよ」 気がついたらあたしの瞳からは涙が出てた。 「何も知らなかったけど、学くんのことたくさん責めたなって思って」 「まぁ、俺そこからお前のメッセージ一切見てないから大丈夫」 「え……?」 ひどい言葉の数々を見られてなくてよかったとは思うけど。 それでも、あたしのメッセージを見てなかったことには疑問が募る。 「俺、母さんのことがあったあたりからお前への気持ち冷めてたからさ」 「そっか……」 ひどいことを言われている気がする。 でも、なんでだろう。 よくわかんないけど、やっぱり好きだって思ってしまう。 そのあと食べた学くんのお手製料理はどれもおいしくて。 でも、涙のせいですこししょっぱい感じがした。 初めて食べた二人でのご飯。 いつか、あの日の料理美味しかったねって 二人で笑える日が来たらいいのにって思った。
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