バウムクーヘンで午後のひとときを

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***** 「年輪を重ねて行く程に大きくなるバウムクーヘン。そんなのあったらきっとヒットするよね」 「いつ食べていいのか分からない」 結局、自分一人では掃除が追い付かず多佳子に手伝ってもらう事となった。 「私、嫌だからね家政婦みたいに掃除や洗濯、ご飯を作るばかりの女じゃあ」 「だからこうやって手伝ってるじゃん」 「そりゃそうだよ、自分でこんなの片付けなきゃ。自分でやらなきゃ」 と騒ぎ始めた。 でも、自分の家にようやく戻れて嬉しそうで何よりだ。 「多佳子!バウムクーヘンとミルク作って置くからね」 だいぶ部屋が片付いて来たのでキリのいいところで一息付こうと催促した 「うん、珍しく気が利くじゃん」と嬉しそうにテーブルに座った。 僕らは久しぶりに対面に向かい合った。そうした午後がなんて長い時間なかったんだろうと気付かされた。 「やっぱ、本場のバウムクーヘンっておいしいね」と幸せそうにミルクと一緒に味わっている。 多佳子は次第に訝しげな顔でバウムクーヘンの残りを観察している。 「本場のバウムクーヘンって、一ヶ月たつと輪が増えるなんて言われてるの。買った時より輪が多いような…」 と不思議そうな顔で輪を指折り数え出した。 するとバウムクーヘンの中に仕込んでおいた結婚指環がカランと音を立ててお皿に落ちた。 「隆司、これって」 「そう、これは…結婚」 そう言うと多佳子は呆れ顔で 「隆司、分かってないよ。こんな高そうなのもったいないよ」 というと 「私達にはこれで充分だったのに~」 そういってバックから取り出したのは婚姻届けと印鑑だった。 完
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