バウムクーヘンで午後のひとときを

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そんな会話をしていた次の日、彼女が突然いなくなった。もう一ヶ月になる。 突然いなくなった事は、喪失感より初めの何日かは驚きの方が勝った。 何故だろうか?僕がなにか悪いことをしただろうか?と2、3日は考えた。 しかし全く覚えがない。当然彼女の実家、電話、考えうる捜索はした。 でも彼女は見つからなかった。 僕らは結婚していなかった。 けどいい感じで互いに過ごしていたのに。いい感じの言葉が宙に浮かぶ。 --同じ高校で同じクラスだった彼女は特に目立つような存在ではなく普通の女の子だった。 歴史研究会と言う部活に所属していて、連れの矢口が彼女のことを時折話題にした。 「渡部さんって見かけによらず変な子なんだよ」 お昼休みに窓際にもたれ掛かりながら矢口はそんなことを口にした。 「そう、何だか目立たない感じだけど」 と言うか矢口がそういうまで誰の事を話題にしたのか分からない程興味がなかった。 「戦国武将の平将門って知ってる?」「ああ、最近偶然[平将門]って本読んだよ」 「彼女、平将門に夢中で月1回は墓参りに行くんだって」 「でも平将門って、鬼のような武将じゃないの?」 「まあ、人好きずきあるさな」
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