バウムクーヘンで午後のひとときを

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そんなことを思い出しながら休日を過ごした。 一ヶ月たったのにまだ帰ってくる確信が何故かあった。印鑑や通帳、お気に入りの服、キャリーバックはなかった。むしろない方が安心ではある。突発的な事故的なものではないようで命に関わることはないだろう。 ある程度何か気持ちの目処が立ったら帰ってきそうだと何故か思えた。 突然スマホが鳴り「隆司、ハロー!今ドイツに来てるんだ。本場のバウムクーヘンが食べたくてね」なんて声が聞こえてくる気がした。 そうしたら僕はなんて返そうか?泣き声になったりすると嫌なので今のうちにシュミレーションしとかないと…。 多佳子は毎日ご飯を作ってくれていた。今はコンビニ弁当で賄っている。 寂しいなんて感情がないと言ったら嘘になる、が帰って来たときにまたご飯を作って貰える喜びもひとしおな気がして味気ない弁当で我慢している。 スマホが鳴った。 多佳子だろうと思い取ると矢口の声が聴こえてきた。 「よう、久しぶり。元気してる?」 「ああ、本当久しぶりだな、取りあえず元気だよ。お前こそどうした?」 「ああ、面白そうな映画のチケットを手に入れたんだ。ペアなんだけど誘う連れが居なくて、チケット貰ってくれない?」 「いいけど、なんの映画だよ」 「平家物語」
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