バウムクーヘンで午後のひとときを

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偶然にしろ僕は少し驚いたがすぐ冷静になれた。 彼女がいなくなって一ヶ月。彼女がいなくなってから直ぐなら誰かの意図みたいなものを感じるけど、この電話は本当の偶然だろう。 「いいよ、どうせなら一緒に行こうよ」「渡部さんと行ってくればいいよ」 「それが、多佳子はいないんだよ」 しばらく沈黙があって 「本当か?」 そう言ってみて本当にいないんだと背筋が寒くなった気がした。 「ああ、、、でも何だか突然過ぎて実感が沸かないというか」 「まあ、渡部さんってそういうところあるかもね」 歴史研究会の彼は多佳子がちょっと変わってるのを知っていた。 突然歌い出したり、物思いに耽ったり、普通の女の子多佳子とのギャップに歴研の人は慣れていた。 「隆司は渡部さんと同居してるよね」 歴研のみんなは知っていたようで確認で聞いたようだ。 「そうだよ、付き合ってるんだ」 高校生の頃[付き合っている]という言葉に強いアイデンティーを感じたけど、社会人になった今では弱々しく響く。 「渡部は渡部で何か考えがあるんだろ」
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