バウムクーヘンで午後のひとときを

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そんなことか…と僕は思ったが言葉に出さず「分かったよ、同居一年目を祝おうよ」と告げた。 すると「バーカ!そんなこと期待してんじゃないの!」と直接多佳子の声が聴こえてきた。 「分かってるよ。分かってるから帰ってきてよ」と僕は何に逆ギレされたか訳も分からず言った。 すると「本当に!?」とても嬉しそうな声で答えると「じゃあ明日帰るから少しは掃除しといてよ、じゃあね~」と調子よく言うのだ。 僕は明日迄に多佳子が望むものを考えなければならなくなり、今度はもう少し時間がほしい気がした。 電話が切れて僕は推理探偵よろしく部屋中を右往左往して考えた。 時折テレビをみては消してまた歩いて、でも結論が出ない。 取りあえず落ち着こう そう言い聞かせ、レモンを輪切りにして紅茶を作り冷凍庫にあったバームクーヘンを出した。 そういえば多佳子が家を出ていったのはこのバウムクーヘンを食べてからだったな……。 そう思うとついしげしげと丸が欠けたそれを眺めた。 何となく指環を思い浮かべた。 『ああ、そういうことかぁ!』 でも仕事も定職に就いてない僕に多佳子はそんなことを望んでいるのだろうか?
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