1人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
プロローグ
ーーーおねえさん、こんなところでなにしてるの?
今日は日差しの良い暖かな快晴だ。否、暖かいというよりかは暑苦しいという方が適するだろうか。
公園に『拾って下さい』という文字付きのダンボールに、このか弱い乙女もセット。ゆく人々は私の方をチラチラと見るが、私を何だと思っているのか直ぐに目を逸らしてくる。
(……石油王さん、早く私を見つけて養ってくれ)
そんな思いでこの行動に出た。かれこれ数ヶ月前から。ーーーと、先ほど初めて私に話しかけてくれたのは私の愛する石油王ではなく、まだ幼い少年だった。
金髪ボブで可愛らしい顔立ちなので遠目から見ていたときには女の子かと思っていたけど。
「なにって、」
心配そうに私を見てくる少年は、太陽と重なってとても眩しい。だからだろうか、すごく天使のように見える。
「私の家だからくつろいでるだけさ」
生憎私は子供に養ってもらう程のクズにはまだ堕ちていない。まぁ、周りから見たらクズなんだろうけど。
「ここが、おねえさんのおうち?」
「あぁ、そうさ」
……家だなんて嘘。21にもなって私は何をしたかって。馬鹿らしいが家出だ。
私の住んでいるダンボールの近くにはベンチがある。そのベンチを占領しているのはいい歳したオッサン。前までは『なんだコイツ』だなんて思ってたけど今では私もそれと同じ分類。
「ホームレス、だよ」
少年は大きい目をパチクリさせて「ほーむれす?」と。ま、小さい子には私の行動は理解出来ないだろうな。
「こんな奴に構ってる暇があるなら家に帰ってママのおっぱいでもしゃぶってな、ガキンチョ」
私は「じゃあな」と。無理やり会話を終わらせ少年をこの場から退散させようとする。長くここにいてもらっちゃあ困る。子供に助けてもらってるみたいで何だか嫌な気分だろう。
「……拾わなくて、いいの?」
「は」
少年の言葉に声が漏れてしまったが、私は直ぐに「あぁ、」と納得する。段ボールに書いてあるこの文字のことか、と。心配そうに目をうるうるさせる少年に何だか汚れた私の心が浄化されるようだった。
「こう見えてガキンチョに拾われるほどプライドがないわけじゃないんだ。いち早く石油王に幸せにしてもらいたいんだが……中々現れないもんだよ」
(……ほんとに私ってバカだよなぁ)
石油王が私なんかを見つけることがないなんてこと、ガキじゃないんだから私だって分かってる。けど、どうしても私は現実逃避がしたくてこんなことを夢見てる。
なんだか虚しくなってきた。私が一つ溜息を零す。ーーーと。
「じゃあ、僕がおねえさんを幸せにするよ」
「ーーーえ、」
「だからおねえさん、僕が大きくなったら一緒に暮らそう!その、言ってたせきゆおーさんを忘れさせるくらい毎日楽しませるから、」
私は開いた口が閉じず。一瞬、イケメンだと思ってしまった。こんなガキ相手に。
「明日も、待ってて」
今度こそ「じゃあねっ!」と言ってこの場を離れる少年。私は少しの間フリーズしてしまったが、ようやく意識を取り戻すことが出来た。
んっと、ちょっと状況が上手く掴めないが……
今、私、プロポーズされた?
最初のコメントを投稿しよう!