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「欲しいものは欲しいって言わないと、なくなっちゃいそうで怖くて。今でもこれ夢なんじゃないかなって怖いもん。それに、卓也はそういうおまじないとか興味ないだろうなって」
「もうちょっと信用してくれよ」
「だって信じられないんだもん」
は、と俺の困惑した声が空気に溶けていく。
「だって私、昔あんなに陰キャラって言われ続けてたんだよ? 卓也みたいな人と付き合えるなんてありえないもん、告白OKされた時だって騙されてるのかなこれって思ったもん。だから、」
「騙してないしちゃんと本気だから。……調べてみろよ、それの意味。……あと、いい加減地元の奴らにはちゃんと話しとかないとな。黙ってたなって怒られる」
俺はスマホの画面を示しながらそっぽを向く。瑞姫が画面をスクロールする指だけを横目で眺め、そしてその指が留まったタイミングで顔を上げる。
「……これ」
「俺もさ、不安なんだよ。ほんとに俺でいいのかなってずっと」
「そんなことない」
瑞姫が被せるように、泣きそうな顔で言う。
「卓也は、私を見つけてくれた人だもん。好きなもの馬鹿にしたりないがしろにしたりしないで真剣に聞いてくれた、初めての人だったんだもの」
だから、ありがとう。
瑞姫はそう言って、とうとう、顔をぐしゃぐしゃにゆがませて泣いた。
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