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そして今日、『あの子』――『櫻井』瑞姫がいなくなった。
「よかったな、サムシング・フォーが揃って」
「ほんとにね」
綺麗にドレスアップした彼女が、あの時みたいな綺麗な笑顔で振り向く。
今日、あの子はいなくなった。
代わりに、新しい『この子』――狩野瑞姫が隣にいる。
扉が開いて見えるのは、友人たち、家族の顔。直哉がふざけて泣くフリをしているのが見える。わざとらしい、まだ式は始まってもいないのに。
「それじゃ、行こうか」
俺はタキシードの裾を翻し、扉の中に足を踏み入れた。瑞姫が緊張の面持ちで頷く。
指輪の内側にこっそりはめ込まれたブルーサファイア。
進む先には、俺が選んだ『サムシング・ブルー』がある。
end.
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