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「ねえ、卓也はどう思う?」
本当に久しぶりに地元で会った帰り道、街灯がポツポツと灯る夜9時のこと。
突然、俺は振り返った幼馴染である彼女――櫻井瑞姫に質問された。
「なにが?」
「私、結婚しようと思ってるの」
言われた意味がスッと飲み込めず、俺は一時、言葉を失う。
それまでうるさく泣いていた蝉の声が、突然遠ざかった気がした。
あの時はなぜに倒置法、と人ごとのようにぼんやり思ったものだが、今改めて思い返してみると納得する。
そういえば彼女は、サプライズ好きだった。
俺にとっては全然面白くもなんともないけど。
そう、全然面白くない。こいつ人の気も知らないで、と俺は未だにあの時を振り返るたびにそう思う。
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