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僕は少し、緊張しながら出勤した。佐藤から預かった鍵で職員室の扉を開ける。すっかり熱がこもった室内はむっとしていて暗い。いつも僕が出勤する頃には既に2人がいて部屋を冷やしておいてくれるから、朝はこんなにも暑いものかと思い知る。
カーテンを開けてリモコンを探す。うしろからついてきた興梠が「これよ」と、差し出した。斜め上に向けてスイッチを押す。ピッという反応はあったが、風が送られてくる気配がない。
「あれ?」
じっとりと汗が背を伝う。
「内部クリーン中かもしれない。少し待ちましょ」
「はい」
一旦席に着き、今日1日の準備を始めた僕たちであったが、10分過ぎた頃、再び立ち上がってエアコンの真下に集合した。
「おかしいです。反応がありません」
「うそ~ん。はあ……あっつ」
手で仰ぐ仕草をする興梠の横顔に、ほんのりと苛立ちが滲む。
「また駄目なの?」
「また? 前も壊れたんですか?」
「そうなの。ちょうど髙橋さんが来る前日だったかな。壊れて、修理に来て貰ったんだけど……」
「買い換えたほうが早くないですか?」
「本部がケチだからお金くれないのよ。生徒が使う教室のエアコンは最新式だけど職員室はね」
「悲しいですね」
廊下から賑やかな声がして、講師の面々が現れた。午前中はたしか、社会保障とパソコン技術だ。下の視聴覚室のエアコンは大丈夫なのか、にわかに心配になる。
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