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「本当に大丈夫なんでしょうか?」
「オン?」
「本当に、面接が苦手なままでも、理想の職につけるでしょうか?」
「つけるよ」
道はひとつじゃないのさ。と男は言った。人間が喜びそうな台詞を選んでみた。案の定青年は元気になった。この元気が旨い旨いご馳走になるなんて彼らは知らないだろう。全身に光のパワーが漲ったと思うだろう。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「明日からきみの人生は薔薇色になるよ。例えば、今日もハローワークに行かねばと気持ちを暗くして朝を迎えるきみに1本の電話がかかってくる。相手はひと月も前にきみを選考で落とした第一志望の企業だ。人事担当の人間が平身低頭、すまなさそうに言う。──申し訳ございません。うちの手違いで、あなたに不採用の連絡をしてしまいました──とね。きみは好待遇で意気揚々と勤め出し、そこでいまの彼女よりもっとランクが上の女性と出会い、結婚をする」
青年はピンとこない様子で頭をかいた。
「僕彼女いたことないです」
「ん……まあ、明日を楽しみにしていたまえ……」
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