1:今日も1日お疲れさん

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 何気なく髪に触れたら、じゅっと音がしそうなほど熱かった。その手で傘を作り、空を見上げる。今度は目を焼かれるかと思った。俺の真横を日傘を持った女性が通り過ぎていく。日傘はなくても腕カバー、帽子、軽装は必須だ。スーツなんか着てフラフラ歩いている自分が馬鹿に見える。  街を行き交う人々の層に違和感を感じた。若い人が多い。2人か、あるいは3~5人ずつの集団で賑やかしく過ぎていく。そうか、夏休みに入ったのだ。  職業訓練校もスタッフにお盆休みがあるといえばあるのだが、彼らのように長期的なものではない。我が世の春……いや、夏。と言わんばかりに自信満々で満喫している若者たちが無性に羨ましくなった。  俺を追い抜かして行った少女たちのうなじから細い首にかけてが、陽光で白く照りかえる。 「ああ、美味しそう……」  これだから、夏は嫌いだ。  駅前の喧騒を抜け、街路樹が並ぶ歩道を歩く。一本道を逸れると急に静かで人通りもまばらになる。車はそこそこ通って行った。まだ7月。これが8月に入るとお盆休みに突入し、車の数も激減する。商店街はシャッターを閉め、たまに俺のように歩道を歩く者が点在するのだ。
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