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だから佐藤さんは、簡単に譲らないでと興梠は言う。
「甘やかすのは私がうんとやります。佐藤さんは未来の支部長を育て上げる責任があるんだから、今日みたいなことでへこたれないで。私があなたを助ける。ずっと支えるわ」
なんだか、一世一代の告白を受けたようで、おかしくなった。絡新婦は人間の男を食い散らかす妖怪とされているが、見境のなさに合わさって、強い情念も感じる過去が多い。いまの彼女には、その女性特有の包容力を感じた。
「俺のことまで甘やかしてどうするんだ。あんまり気配りがいいとまたおんぶに抱っこしちゃうから、ちゃんと突き放してくれないと困るよ」
茶化しで誤魔化されたことにも気づかないで、興梠は真面目に「それもそうね」と頷いた。
「ところで佐藤さん。始末書書きれなかったんじゃないです?」
「げっ。忘れてた」
《悪魔事件・終》
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