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「もう側に離れないでね、坊や。」
先日、この牧場での誕生パーティー直前に脱走した子ヤギのモミジを傍らに、母ヤギのカエデはそっと寄り添って語りかけた。
ここは、とある観光牧場。
ここ、ふれあい牧場コーナーでは、ヤギやヒツジやニワトリが放し飼いにされ、子供達が撫でに来たり餌をやったり触れあっていた。
「痛い痛い痛い!!何故叩く!!」
「おいおい!!おいらの角デリケートなんだよ。優しく触らないと突っつくぞ!!」
「ふがふがふがふが!!鼻を塞ぐな鼻を!!」
・・・最近の人間の子供達って節操は無いのかしら・・・
・・・私達の仲間達が、こんな乱暴に触られて・・・
・・・親にどういう教育受けてるのかしら・・・あの腕白にも程がある子供達は・・・
・・・子供達に乱暴されてる仲間を助けたいけど・・・このモミジは私が寄り添ってないと・・・
「はっ・・・」
「そこの坊や!!やめなさい!!勝手に菓子をヤギさんにあげたらヤギさんのお腹『お痛』しちゃうでしょ!!」
「だって!この僕の大好きなこのお菓子、このヒツジさんに食べさせたいの!!」
ふれあい牧場のスタッフを振り切って、1人の子供がヒツジのアンの口元にお菓子を差しのべてきたのだ。
・・・これはまずい・・・!!
・・・あの菓子をアンちゃんが食べたら、病気になって命の危険が・・・!!
ばっ!!
母ヤギのカエデは、とっさにお菓子を与える子供に突進した。
どしん!!
ヤギに押されて倒れた子供は、反動でお菓子を地面ばら蒔かれた。
「えーんえーん!僕のお菓子!僕のお菓子を取り上げないでー!!」
二次被害を防ぐ為に、とっさに地面にばら蒔かれたお菓子を回収する牧場スタッフにバタバタと駄々をこねて泣きつく子供。
「危ないとこだったね。アンちゃん。」
ブルブル震えて硬直するヒツジのアンに、母ヤギのカエデが語りかけた。
どしん!!
「痛いっ!!何ぶつかってくるの?アンちゃん!今あんたは・・・」
「に、人間の子供に何をするのよ!!」
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