0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
夢桜
ひらひらと、ひらひらと、淡い桃色の花びらが舞い降りてくる。わたしの手のひらに、ひとひらの花びらが降りてきた。
小さい花びらだ。なのに、上を見上げれば大輪の桜の花が咲き誇っている。
小さい花びらも、たくさん集まれば美しい物となる。わたしは、優しく小さい花びらを人差し指で撫でた。何処と無く、柔らかい感触がする。
「秋菜」
名前を呼ばれて、うしろを振り向く。名前を呼んだ彼の人は、優しい笑みを浮かべている。
「誠哉さん」
わたしが彼の人の名前を呼ぶと同時に、強い風が吹き荒れ、大輪の花びらが宙を舞った。
わたしの目は反射的に閉じ、風が収まると、また目を開けた。
「強い風でしたーーーーあれ?」
さっきまでいた、彼の人がいなくなっていた。
ズキンッ
「いっ……」
何? 急に……?
最初のコメントを投稿しよう!