序章 ~夢~

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いつもと同じ朝の教室の風景に、いつもと同じ『腐女子』と呼ばれる女子生徒への嘲笑、だが幸いなことに本人はまだ登校しておらず、瑠璃とクラスメート数人がいるだけだった。そのクラスメートたちは瑠璃とは比較的に仲の良い女子グループ。瑠璃は文庫本を開き、女子グループは少し離れた机でけらけらと高笑いを上げていた。文庫の活字など、まったく追えなかった。遮る物が何もない教室では、女子生徒への罵詈雑言は瑠璃の耳に突き刺さる。 瑠璃は常に傍観者だった。この悪意の渦に呑まれまいと必死に抗っていた。しかし、抗うことは難しく、また、流されてしまうことはことは簡単で楽なのだ。そしてこの朝、瑠璃は流されてしまう。悪意と嘲笑の流れの中に。 「ねえ、橘さんもそう思うよね」 「え?」 自分の名前を呼ばれて、文庫本に向けていた顔を起こす。聞き返したが、話しの内容は聞こえていた。 「だからー、腐女子の奴、よく毎日毎日学校に来れるよねって話し。こんな状況でさぁ、私だったら自殺もんだよー」 一人の女子の言葉に、あんがい気に入ってんじゃない?と誰かが言うと、じゃあ超マゾじゃん、と誰かが返しその場がどっと笑いくずれる。
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