マフラーアンソロジー

稀代のロマンティスト

　僕の家は自慢じゃないけどビルトインガレージなんだ。
　店舗付き中古住宅を買って店舗部分を改築してガレージにしたって訳。
　ちなみにシャッターは電動だよ～ん。
　そこで長年の夢だったガレージライフをスタートさせたのは４１歳の時だった。
　いざ実現すると、芥川龍之介作「芋粥」の主人公五位の心境にならなくもなかったけど、あれからもう１１年も経つのか。
　理想としていた足車と趣味車の２台体制は今も続いている。
　引っ越した当時はダイハツミラジーノとアルファロメオＧＴＶだった。
　それからスズキスイフトとマツダＲＸ－８にして現在はスバルＲ２とホンダビート。
　一回だけマイガレージの中でＤＩＹでマフラー交換したことがあった。
　ＲＸ－８の。
　マフラーハンガープライヤーやスパナやラチェットレンチやハンマーなんかを駆使して悪戦苦闘してさ。
　むっちゃ力仕事だったから完遂した時、俺は男だって思ったね。
　で、車検非対応マフラーになっちゃったからめっちゃでかい音になっちゃった。
　世田谷ベースの所さんじゃないけど、おバカな趣味だね。
　ロータリーサウンドを思いっきり楽しみたかったからしょうがないよ。
　近所迷惑だからガレージを出る時はインナーサイレンサーを入れたりしてたけど、確かに脳天を劈くような高音が素敵で心地よかったなあ。
　乗ってる時の気分は１９９１年にルマンを制したマツダ７８７Ｂを駆るステファン・ヨハンソンってとこかな。