七竈 ～夏～

ななかまど

　今日はめんどくさいから、カップ麺でいいや。

　今日はめんどくさいからという言い訳を結構、頻繁にしている気がする、と思いながら、七月はキッチンでお湯を沸かしていた。

　軽快な音楽が部屋中に響き渡る。

　このマンション特有のチャイムの音だ。

「はいはいはい」
と言いながら、インターフォンに向かう。

　友人が連絡せずに来ることはないので、まず、セールスだ。

　奥様、お子さんの英会話教室の体験入学を――
とかいうのだったら、即行切ろうと思いながら、七月はインターフォンに出た。

「――俺だ」

　誰だ？
と言い返しそうになったが、誰かはわかっていた。

　沈黙のあと、彼は言う。

「槻田だ」

　いや、槻田はわかっているけど、なにしに来た、と思っていたが、やはり声には出せなかった。