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敷地面積が狭いからだろうか。
妙に縦に長く感じる三村の家。
小さなちゃぶ台の前に胡坐をかき、三橋は薄い問題集で顔を扇いでいた。
振り返り、窓際のデスクの上から、学校の方角を見てみたが、そこには何処とも変わりない夏の空があるだけだった。
「あ、これと同じ問題、何処かで見たよね」
ちゃぶ台の向こう側で、三村はせっせと宿題をやっている。
「それだよ!」
「あ?」
三村は顔を上げ、こちらを見ていた。
「それだよ。
その問題集」
と扇ぐのに、ちょうどよいサイズだったそれを取り上げられた。
ページを開きながら、
「三橋、丸写しは駄目だからねー」
と言う。
お前は教師か、と思ったとき、槻田のいつも涼しげな顔が頭に浮かび、余計腹が立った。
片膝を立て、意地になったように、問題集を取り返し、それで扇ぐ。
「なんでお前んちにはクーラーがないんだ!」
「いらないでしょ。
うち、川が近くて涼しいし」
「……何処がだ」
と吐き捨てると、
「じゃあ、帰ってやんなよ~。
三橋んちの方が家も広いし、クーラーあるじゃん」
と言い返される。
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