犯人

32/65
前へ
/366ページ
次へ
 思わず、後ずさりそうになったが、何故か影も後退する。  だが、後退した影は、思い直したように、こちらに向かって来た。  首に何かが触れた。  手だ。  ぐいぐいと、それは自分の首を締め付けてくる。  見えていないので、不思議な感じだった。  突然、首許が苦しくなったような、そんな感じ。  意識が遠ざかりそうになる。  暗闇に一面の白い花が見えた。  七竈の白い花――。  自分を苦しめるそれが頭に浮かんだことで、意識がはっきりとした。
/366ページ

最初のコメントを投稿しよう!

568人が本棚に入れています
本棚に追加