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七月は頬に手をやり、小首を傾げてみせる。
「私、今まで影は影だけの存在なんだと思ってたわ。
影だけしかない、何か恐ろしいものなんだと。
だけど、今日のパンダを見て思ったの。
パンダは、『姿が見えないだけで、そこに居る――』
影には本体があってしかるべきなのよね」
「君の見た影には、本体である人間が実はついてて、それが此処で君に姿を見られて走って逃げたってこと?」
「……そうなるのかしら。
よくわからないわ。
もしそうなら、今までの影にも本体があったってことになるわよね」
いろいろと過去に見たものを思い出そうと、七月はまだ明るい空を見上げ、目を細める。
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