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「ともかく、影が逃げ出すなんて、かつてないことだったから、此処に何かあるのかもしれないと思って来てみたの。
まあ、パンダの予言が私のことだとすると、ちょっと困ったことがあるんだけどね」
「そうだね。
君の想定が正しくて、パンダが三橋のことを言っているんじゃないとしたら――」
と三村もすぐわかったらしく頷く。
だが、まあ、そんなことは些細な問題かもしれないな。
今起こっていることに比べたら、と七月は夏の陽気に腐敗しつつある死体を見下ろした。
「影の話は今まで誰にも話してないわ。
話したくなかったし」
「どうしてだ?」
という声がした。
三橋のものでも、三村のものでもないその声の主を、全員が振り返る。
七月は彼を見つめて言った。
「昔――
私が初めて影を見たのは、学園の、あの七竈の下だから」
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