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パンダの予言
七月が走って校門を出たとき、
「七月ちゃーん」
と何処からともなく、自分を呼ぶ声がした。
反対車線にとまっている車から誰かが車から手を振っている。
味も素っ気もない感じの白い車だ。
視力が悪いのでよく見えないが、声から察するに窓から覗いているのは、どうやら隆彦のようだった。
「どうしたのー?
何か事件ー?」
と声を張り上げ、訊いてみたが、
「そうそうこの辺りで事件もないよ」
と隆彦は笑う。
「一人?」
と訊かれ、このまま叫び合って話してるのもなんだなと思い、七月は左右を見て、車道を渡った。
「一人といえば、一人よ」
そんな曖昧な答え方をすると、なにそれ、と隆彦は笑う。
「いや。
今、撒いてきたのよ、送って帰るって奴らを」
「えっ? 大丈夫?
ストーカー?」
「いや、親切な人たち」
隆彦はますますわからなくなったらしく、小首を傾げていた。
そのとき、校舎から出てくる三橋たちの姿が見えた。
「隆ちゃん、今、仕事中?」
とそちらを見ながら七月は訊く。
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