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俺の大学の友達の孝之から聞いた話。
孝之は小学生の時に、父親の仕事の都合で、今の家に引っ越したらしい。
割と田舎な場所だ。
中古物件だったが、間取りは広く、駅やスーパーにも近くて不便ではなかったらしい。
引っ越しした日、孝之とお兄さんは2階に1つずつ部屋を貰って、自分の持ち物を整理し始めた。
今まで兄弟1つの部屋だったから、嬉しくてウキウキしながら荷物を片付けたそうだ。
孝之は今使わない物や玩具を、段ボールに入れて、押入れにしまおうと思った。
が、押入れの奥……、壁の隅にくぼみがある事に気がついた。
縦長の細い長方形のくぼみ…
ちょうど、障子の引き手のようなくぼみだった。
指を引っ掛けてみると、引き戸のようにその壁が動く。
土間や縁側があるような古い家だから、隠し扉でもあるのかとそんな風に思ったらしい。
中を覗いてみると、子供なら匍匐前進して通れるような狭い通路になっている。
通路の奥は暗くて全く何も見えないので、懐中電灯を持って来た。
匍匐前進で、先を照らしながら入ってみる。
今考えると、5メートルくらい進んだんではないかと孝之は俺に話した。
行き止まりになったが、壁を触ると、再び長方形のくぼみを見つけ、指を引っ掛けてみると、やはりスススと開く。
中をこっそりと覗くと、広い和室が目の前に広がっていた。
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