気になる真面目なあの子

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気になる真面目なあの子

 学校で一番の関心事は、もちろん「席替え」だ。  今まで、隣の隣っていうのはあったけど、ジャスト「となり」って言うのはなかった。  だけど、今日の席替えで、ついに憧れの神藤絵里花(しんどう・えりか)さんの隣の席をゲットすることができたんだ。  だけど結局、僕は彼女に話し掛けることはできなかった。左目でちらっと見るのが、精いっぱい。  長い黒髪を後ろに束ねて、背筋をピンと伸ばした上品な姿が、より一層、話しかけにくくしていた。  彼女はいつも、まっすぐに黒板を見て、几帳面な字で一生懸命、書き写していた。  特に、担任で英語の大澤先生の授業の時はうなずきながら、強い筆圧でアルファベットを書きなぐっていた。  だけど、彼女の隣にいられる、というだけで、僕は「しあわせ」だった。  ただ、彼女は大澤先生の事が好きなんだと思うと、少し焼きもちを妬いてしまう自分が、恥ずかしかった。  ところが。  ある日を境に、彼女は休みがちになった。  一週間に2日も、3日も休む日が増えた。  だから僕は、思い切って話し掛けることにした。 「あ、あのさ。最近どこか、調子悪いの?」 「え?」  彼女は、初めて僕の方をまっすぐ見てくれた。 「どこも悪くないわ。悪くないけど、でも。私には時間が」  そう言い掛けて、目を伏せてしまった。  
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